フォトキューブ3D

chachaco

  • 231099545a10
       今までの記憶のかけらの残像です。    小さすぎる私の心のシャッターですが、、、。

cook

無料ブログはココログ

« お風呂 | トップページ | 暑い日が続きますが! »

2013年7月16日 (火)

夢物語

目の前を鰯の目刺しをくわえた猫が、その時にはゆっくりと歩いて通りすぎた。台所の角に餌皿を置いたら、そこが気にいらなかったようだ。嫌がったって事なんだろう。にっと笑って見せたら、置場所が違うからねと目配せされた。ニャ~。僕は窓を背に真っ黒け猫を眺めてビールを飲んでた。新月の日の夜だった。この後奇妙な体験をする。思いが叶うように幾つか願い事を記して、一通りのお祈りを終えた時だった。外に何かいた。それが窓ガラスの向こうから囁いた。かすかに聞こえた声は僕の名前を呼んだ気がした。なんとも言えない怖さがあった。うっと、うなってしまった。
黒猫は目をこちらに向けたまま固まってた。猫も怖いのだろう。顔黒猫がどうするつもりだ?と訊ねてきた。いや、どうしたら良いかな、確かでないけれど、女の子の様な気がするから窓を開けて確かめて見るよ。それが通じる様に僕に顔を向けたままの猫に目くばせした。
耳奥に残る言葉に懐かしさも感じたから不思議だ。首がもげ落ちたよにカクっと揺れてようやく黒猫はまた何事も無く目刺しを食べはじめた。僕は核心も自信もない。体をひねって立ち上がった。迷いながらカーテンの陰にあるサッシの取っ手に指を這わせた。サッシはとうに引退して役目を果たさなくなってる。人にたとえる。朽ち果て腐食した窓を開ければ良い。そのアルミニウムは何色だろ、単語が見つからない。塩枯れた僕の輪郭がカーテンと一緒に揺れた。鼻腔には得体の知れない匂いを感じた。頭上の室内灯もあの声がした時に際限なく精気を吸われておののいた。それと古い窓は怯えていた。どこか老いぼれ犬にも見え、その感じが悲壮。僕は背中をこづかれたのを感じ、みてくれ悪い老いぼれ犬を手に力を込めて動かした。老いぼれ犬は促され自分では自由のきかない腰を上げた。ザザザ手こずる。そしてだ、アルミがすり減る。その金属粉が僕の肺に吸い込まれ、隙間なく細胞に溜め込められる。どうにもならない事もある。僕と君を繋ぐ絆が散り散りバラバラになる。苦しくて息があえぎ声になる。何かがいっぺんに姿を変えて腐食したの。舞い上がるチリも1つ1つ、脈打つ度に鈍い光を放つんだ。でも綺麗でもあった。またなにかが名前を呼ぶそんな気がした。夜風に迷い舞う、またたびの香りに酔った猫だろか。僕が不幸にした女の子だろか。
故郷の青空の下で起きた出来事は、僕を許す事は無い。足を滑らして転倒して母は流産した。その妹だろ。その思いが一向に消えずにいた。助けてくれなかった僕に逢いに来たか。
目を閉じて小さな塊に祈った。でも妹への懺悔は叶わない。六根清浄。祭儀祭儀。六根清浄。心に囁く闇の向こうのリフレーン。悲しく悲しく響く。それが悲しすぎて幾重にも自分を包む。それが赦されないばかりにひきずる。
闇の中に荼毘したばかりのよに青白い灰の塊だけ見える。すると幾筋かの小さな風が現れて灰の塊を運んでしまった。なんでそれかってね、僕はただ夜桜を見たかった。でも桜の樹の下に眠っている亡者が蘇えって僕を懲らしめに来そうで恐ろしかった。それだからだろか、妙に好奇心が湧きたって、どうしても開け放ちたくなった。きちんと窓枠に手をかけた。やはり分厚いガラスがはめられた窓は老体の如く重くて厄介だった。鈍色のアルミのレーンの底部は三つの峰で区切られてた。そのサッシの溝の上をきしみをあげて滑せてから、そこで一旦手を休めた。この部屋の住人、僕という見送り人に見放された。いや、末路で悲鳴をあげて悲しんでる僕を哀れんで止まってくれたのは窓の方だった。
窓を開けたら風景の先の満開の桜は寝静まって無言だった。丁度暗闇の中ヒールの足音が響いた。帰宅が遅くなってしまった少女か、一瞬か弱い後ろ姿を見つけた。そこにあった桜は力を振り絞ってた。身をよじらせて薄紅の花びらを街灯にともしてみせた。その頃、通りすぎて消えたはずの少女は体に痺れを感じながら、全身には強張る激痛、無表情で華奢な臀部に違和感を覚えた。その刹那、風が舞い降り、一瞬少女をくるむ空気が熱を帯びはじけた様に明るくなった。ショルダーバッグを抱き抱えたまま、恐ろしい程の目眩を感じた少女は、身体を斜めにしたままよろりと桜の幹のほうに数歩も移動した。衝撃があって真っ先に肩の辺りに痛みを感じた。生白い切り口が膚を捉えて血を滲ませた。綺麗な桜の木の幹にぶつかった際の衝撃に耐えれる自分は無かった。少女は見捨てられた様な悲しみを今日二度も覚えたのだった。そのあまりにも痛い衝撃を和らげようとして片手を必死に伸ばして地面に身体を落としたかった。しかし、それを試してみたら勢いを失うどころか、生の桜の太い幹を突き抜け、貫いて後ようやく反対側の樹皮を突き破ってそろりと止めた。

女の透き通った薄い腕に体を貫かれ痛に耐えつつも桜は麻酔に酔うような感覚を味わった。
恍惚として木であるはずの体さえもしびれた。その痺れをくれた少女は自分が今まで呪いを込めて生きてきた土と幹の足元に倒れていた。その少女に体を貫かれた際に霊気も吸われ命を短くした。そう感じてしまったら余命のある花が息を絶えるのを感じた。そこに眠る少女の体にハラハラと降るように舞い降ち辺りを煙らせた。そこで桜の思考は瞬時に消えた。残してはいけない人から受けた想念が間違いを犯した。その記憶は五月に花を付ける頃に、この場所に訪れてくる青年が自分を仰ぎ見て泪を落とす様に自分にくれた想念だった。その想念が自分を包み込み、やがて悲しみに満ちた思いと、青年が今まで見続けてきた誰も知ることの無い物語が年老いた桜の体の自分の中を駆け巡った。穏やかなゆるりとした物語は最後はうつろうつろした儚さでもって泪にしか変えれないものだった。
美しさに満ちた声音が、母と覚わしき声が青年の名前を慈愛で名前を呼び止めたものだった。 
少女のか細い腕が貫いたその時だったろうか。
まさに気を失うその刹那に、想念に刻み込まれた名前を少女の体を借りて母が叫んだのやも知れない。それは青年が夢見る母と戯れる若草の匂う五月なのでは無いだろうか。
夢の中とも現実とも言い難い記憶の中で、少女は見た事の無い少年とその母親らしき女性との別れの様子を見守ってた。そしてそれは鮮やか過ぎるほど悲しみは感じられなかったし、その爽やかな睦にはいつかまた再会するであろう希望に満ちた輝きを放っていたのだった。
夜の静寂、鼻腔にわずかな桜の香を嗅いで少女は目をさました。
静まりかえった公園にポツンと取り残された自分が記憶をたどり、反省する微弱な失態も無いことにほっとするばかりだった。
立ち上がり気になり見上げた老木の桜には何故か花は一つも無かった。
代わりに地面の一面すべてが街灯に照らされて真っ白だった。桜の花。
辺りには誰もいなかった。何事も無かったように少女はその場を離れた。しなやかな腕にチクリとした痛がゆさを感じた。認めた時、桜の花弁が一枚だけ落ちずに剥がれず残っていた。その淡い桜の花をつまんではがして見ると柔らかい皮膚には切り傷が出来ていて幽かに血が滲んでいた。うんと小さくうなずいて、平気ばかりよと少女は公園から出るよう自ら諭した。それから何事も無かったようにヒール音を公園に残すようにして姿を消した。

僕が窓を開けた時に桜の花は暗闇で分からなかったけど桜の花は音もなく散っていたのだ。
街灯に照らされた桜の木の半分、そして闇に消された残り半分。数日前はまだつぼみだけしかなかったのに。ちょっとしか日にちは経っていないはずなのに、今は公園からかなり離れていても花弁が匂いたってみせている。この窓を開けた部屋にも優しく迷い込んで来て僕を慰めていた。君以外の誰が僕の名前を呼ぶだろう。今は君しかいない。
君と三度目の桜の季節に。僕の名前を誰も呼ばなかったのか。
ただ僕の名前を呼ぶ君の声しか思い浮かばない。ふと気が付くと窓のサッシの上にいつの間にか黒猫が乗っかって髭づくろいをしながら顔を舐めていた。
もういいだろう。と黒猫にやんわり諭された。
開けとくべきか念のため訊ねたら、もう止めとけとスネを舐められた。

「故郷の桜はなに桜?」

いつの間にか黒猫が空になった台所の餌皿をなめまわしながら聞いてきた。

いや、なんでもないんだ。いつか二人で行きたいね。行きたい。

お母さん、故郷の町はまだ桜は咲いていませんよ、咲いていないようです。

お母さん。

« お風呂 | トップページ | 暑い日が続きますが! »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 夢物語:

« お風呂 | トップページ | 暑い日が続きますが! »